ミミズは最も働き者のガーデナー
庭の豊かさは土中にどれだけミミズが見られるかによってわかるといいます。ミミズが多ければ多いほど土が肥えている証拠であり、ミミズが多すぎて困るということはないそうです。(ミミズがたくさん潜んでいる豊かな腐葉土を想像して下さい。) ミミズは生態系の循環の中で欠かすことのできない大切な役割を果たしています。ミミズは人間の手ではとても出来ないずっと繊細なやり方で、効果的に土をほぐして通気性を高め、ミミズ糞で土を肥やしてくれます。だから本来ならミミズが快適に仕事ができるようにマルチングや有機物を常に施し続けて不耕起栽培を行う方が人間が土を耕して土中のシステムを乱すよりもはるかに理にかなっているといえます。(もちろん圧縮化により硬化してしまいミミズもいなくなってしまったような土は耕さなければなりませんが。)
ミミズは堆肥の材料となる落ち葉、剪定した枝葉、枯れ草、刈った芝、野菜クズなどの有機物質を食べ、それを糞として排出することによって堆肥の分解を進め、それが更に有益な微生物によって分解されて素晴らしい堆肥が出来上がります。
ミミズコンポスト容器
物置裏に置いた自家製コンポスト |
右の写真は自家製のミミズコンポスト容器です。構造は底に金網を張った木箱を2段重ねたものに受け台をつけたものです。受け台の底にはたまった液肥を放出するための蛇口が取り付けてあります。似たような構造のミミズコンポスト容器は市販もされており、時間が惜しい方、日曜大工が苦手という方におすすめです(通販サイトはこちら )。我が家はお金が惜しいので自作しましたが、材料費もけっこうかかった上に、出来上がったものがイマイチだったのでこんなことなら既製品を買っておけばよかったかも・・と思っています。我が家で作った容器のサイズは日本の新聞紙1面分くらいの大きさですが、このサイズだとコンポストがいっぱいになると相当重たくなり、大人二人でやっと持ち上げられるくらいの重さです。始めは3段分作ったのですが、1箱は重すぎて底が抜けてしまいました。もし、ご家庭で木で作る場合には、プラスチック製のものよりかなり重くなることを考慮して、もう少しサイズを小さめにするか底の真ん中を補強することをおすすめします。(木材は腐食しにくいものが望ましいのですが、腐食防止のため化学処理加工されているものを使用するのはミミズにシックハウスを提供することになりますからやめましょう。)いずれにせよ、この大きさだと2段で十分であることがわかりました。(夫婦二人家族の出す生ゴミで)2段目が一杯になるまでに1段目のコンポストが完成するからです。
自家製ミミズコンポストの受け台 |
さて、もっと簡単な方法でとりあえず試してみたいという方は、同じ大きさの発泡スチロール(40x60cm位)の箱を2つ重ねて利用できます。箱の底にミミズが通れるくらいの穴を20個程度開けてトレーの上に載せ、麻袋のようなものでふたをすれば簡易ミミズコンポストの出来上がりです。発泡スチロールの箱、特に底に穴を開けたものは持ち運ぶときにコンポストの重さに耐えられるほど頑丈ではありません。耐久性のないものであることを認識した上で利用してください。
コンポスト置き場
望ましいのは日陰で風雨にさらされない軒下のような静かな場所です。ミミズは紫外線に当たると死んでしまうのでふたを開けたときに直射日光に当たらない場所を選びましょう。湿ったところが好きですが大雨などで水浸しになると今度は溺れ死んでしまいます。また、急激な温度変化を起こすような場所も適していないですね(風当たりが強くて霜の降りやすい場所など)。我が家では物置小屋と車庫と塀の三方に囲まれた物置小屋の軒下に設置しています。ミミズの入手
容器が出来上がったところでミミズを入手します。家庭用であれば500匹/1000匹くらい(マーガリン容器/アイスクリーム容器一杯分)から始めると良いでしょう。残飯や家畜のふんなどの腐敗有機物を主なエサとするコンポストミミズの代表であるシマミミズやアカミミズが一般的に良いとされています。コンポストミミズは市販のものを入手できますが、私感では自分の庭(コンポスト・腐葉土置き場)にいるものを使って何の問題もないと思います。かえって通信販売などで気候の違う場所から買うよりもその地域にもともと住んでいる種類の方が環境への適応力があると思うのです。いずれにしろ、何種類か入れておけば適応するタイプが生き残って繁殖します。実際、我が家は近所の義父母の野外コンポストにウヨウヨいたミミズを譲ってもらってはじめましたが大変順調にいっています。赤いのあり太いのあり、数種類いるようですがよく繁殖しています。ちなみにコンポストミミズは土ミミズのように土だけの中では生きられません。
コンポスト上段を開けたところ |
コンポスト完成間近の下段 |
下段の拡大図 |
えさやりを始める
我が家で行っているえさやりの手順をご紹介します。最初は木箱1段のみでスタートします。木箱に堆肥を3分の1程入れてよく湿らせた上、ミミズを入れます。薄暗いところで行って下さい。次に、
- 残飯を入れます(野菜や果物のクズを中心に)
- 土をふりかけます
- 新聞紙を1、2枚かぶせてふたをします
一箱分が埋まったら2段目を重ね、同じ作業を繰り返します。ミミズは餌を求めて網底をくぐって下段の箱から上段の箱に移動してゆきます。2段目が一杯になる頃には1段目は養分たっぷりの素晴らしいミミズ糞にかわっている筈です。1段目をミミズごと庭にまいて空にしたらそれを今度は上段にしてまた同じ作業を繰り返します。
注意すべきこと
底にたまった液肥は蛇口から集める |
- 肉、魚、ソースなど臭いの原因になるものはネズミを惹きつけるので入れない
- 油や油っこいものは入れない
- ミミズが嫌いな酸性度が強すぎるもの(柑橘類等)や、タマネギ・ニンニクの類は様子を見ながら控えめに入れる(土や石灰を一緒に入れて中和すると良い)
- ある程度の虫はわきますが、異常に虫が多かったりどろどろになったりしてうまくいかない時は土、石灰、草などを多めに入れて中身のバランスの調整をはかる
養分満点! ミミズ糞と液肥の効用
さて、いよいよコンポストの中身が分解されてミミズ糞でいっぱいになったら木箱をひっくり返してミミズごと庭の必要な箇所に施します。
注:安全のために必ず軍手をつけるようにしましょう。オーストラリア在住の方は特にRedback Spider(セアカゴケグモ)等の毒蜘蛛に気をつけて下さい。
木箱をひっくり返したところ |
猛毒のあるセアカゴケグモ |
こちらのコモリグモは噛みつきます |
このミミズ糞、アメリカのコネチカット州での実験によると通常の土壌(地面から15センチの表層部分)よりも窒素分が5倍、リン酸が7倍、カリ(ポタシウム)に至っては11倍も豊富であるという結果が出たそうです。また、カルシウムやマグネシウム含有量も表面土壌の3倍に及びます。(参考文献 Branton Kenton: Quantum Carrot, Ebury Press)。家庭の生ゴミからこんなに素晴らしく、しかも安全な有機肥料が出来上がるなんて感動的だと思いませんか?
ミミズコンポストを作る過程で出来る副産物がLiquid Worm Castings(通称ミミズの"おしっこ")と呼ばれる液体です。これはコンポストの中の余分な水分がしたたり落ちて受け底にたまったもので、ミミズ糞の養分がたっぷりと含まれています。
ミミズの"おしっこ"原液 |
左を薄めたもの |
このミミズの"おしっこ"の希釈液は安全な即効性の液肥として使うことができ、ちょっとお疲れ気味の植物に与えてやると生き生きと甦ります。ミネラル不足の症状がみられる植物に葉面散布したり養分が流れやすい鉢植えの植物に与えることが出来ます。葉面散布する場合はおしっこの色になるくらいまで薄めます。我が家ではテラコッタの鉢植えイチゴに定期的にこの液肥を与えてやることで収穫期の最期の方でも大きなみずみずしいイチゴが出来ました。
ミミズ糞は欲しいけど家庭で作るのはちょっと・・・っという方は手っ取り早く市販のミミズ糞を利用することもできます。ミミズ糞少量を水に浸けておけばミミズのおしっこと同様の効果をもつ液肥(Worm Tea)ができます。
さあ、あなたも早速ミミズコンポストを始めてみませんか?
ミミズコンポスト関連本/DVD
生ゴミを食べてもらうミミズ御殿の作り方—ミミズコンポスト完全マニュアル・・・佐原 みどり (著), 中村 好男
だれでもできる ミミズで生ゴミリサイクル;ミミズに学ぶ環境学習・・・Mary Appelhof (著), 佐原 みどり/科学教育研究会 (訳)
ミミズと土と有機農業—「地球の虫」のはたらき・・・中村 好男 (著)
みみず物語—循環農場への道のり・・・小泉 英政 (著)
「アクセス」/生物の神秘と科学 Vol.2 「ミミズから学ぶ/土つくり」(DVD)・・・ビクターエンタテインメント
初筆−2003年6月、最終更新−2007年2月
OZ GARDEN はミミズコンポスト・リングに加盟しています | ||
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