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パーマカルチャー

パーマカルチャー・シンボジウム参加記

2005年4月8日〜15日まで、第8回パーマカルチャー全豪集会が地元メルボルンで開催されました。4月11日に開催されたシンポジウムは一般からの参加も可能だったので、会社をお休みして出席してきました。以下はその時の簡単な記録です。

◆◆◆◆◆

シンポジウムはメルボルン北部の郊外エルサムのコミュニティーセンターで行われました。私の家から電車で乗り継いで行くと2時間以上かかるのでいつもより一時間以上早起きしたのにもかかわらず、駅からセンターまで歩くのに迷ったので30分ほど遅刻してディビッド・ホルムグレン氏の開会の挨拶と最初の基調講演の始めの部分を逃してしまいました。

到着してみて出席者の多さにびっくり。参加費が160豪ドルとパーマカルチュラリストにはけっこう高い金額(会社員の私でさえ迷った)だったのでそれほど多くないだろうと思っていたのですが、どうやら特別割引料金で駆け込み参加した人がかなりいたようです。全部で300人くらいいたのではないでしょうか。ドレッドヘアのヒッピー系の人、職場から派遣されて来ているスーツ姿の人、海外からの参加者など顔ぶれも様々でした。

西シドニー大学スチュアート・ヒル教授の基調講演 (9:15am)

スチュアート・ヒル教授の基調講演ヒル教授の基調講演はユーモラスで密度が濃くて聴衆の反応も抜群でした。最初の部分を逃してしまったのが悔やまれます。講演の中では現代農業の抱える問題の3つのソリューションを提示。
一つ目はEfficiency(効率性)
二つ目はSubstitution(代替・代用)
三つ目は Design(デザイン)
アインシュタインの言葉から引用した「Smart people solve problems. Wise people avoid them.」という表現が印象的で、聴衆からも笑いがでていました。ホント、福岡正信氏も書いていましたけど問題を作っておいて解決するより始めっから問題を作らなければいいことなんですけどね。20秒ごとに次から次へとOHPのスライドが変わって行く早いテンポについていくのは大変でしたが、この人の授業を受けてみたいな〜という気分にさせられました。

モラグ・ギャンブル女史の基調講演 (10:00am)

クリスタル・ウォーターの現状についてスライド付きの報告が行われました。クリスタル・ウォーターは70年代に多くのパーマカルチャリストが移り住んでコミュニティーを作った場所です。ここはビレッジとは言われていても近所に徒歩で行けないほど一軒一軒がかなり離れているそうです。各戸が各自にパーマカルチャー的な持続可能な生活様式を目指して来たわけですが、各戸ばらばらの取り組みだとどうしてもエネルギー効率の向上には限界があるということで、もっとコミュニティー全体として取り組もうという方向に向かって来ているそうです。

午前中の講演 (11:15am)

技術分科会と社会環境分科会に分かれてそれぞれ二つずつの講演がありました。その中で特に興味深かった社会環境分科会のコミュニティーガーデンの報告をご紹介します。

Peta Christensenさんの講演コミュニティー・ガーデンのコーディネーターであるPeta Christensenさんが、メルボルン市内のリッチモンド地区やフィッツロイ地区のコミュニティー・ガーデンで繰り広げられる悲喜こもごもの人間模様をスライドを交えて語ってくれました。
あるトルコ人男性が祖国から種を持って来て大事に大事に育てた白桃の木が大きくなって、隣の畑に日陰を作ってしまったので、畑の持ち主であるベトナム人男性が桃の木の枝を切ってしまい通訳を雇って調停に持ち込む程の大げんかに発展してしまった話。
他人の名前を使ってこっそりと複数の畑を所有し、コーディネータが注意しても「自分より年少のくせに年長者に指示するな」と意地を張る中国人のおばあさんの話。
近くのベトナム料理店のトイレからもらってくる肥やしで作った野菜を、規則違反の営利目的でこっそり市場で売っているベトナム人女性の話。
尿を肥料にする移民達とそれが通路に流れていやがる移民達の間のいさかい・・・。
コミュニティー・ガーデンの活動報告を通して他民族都市としてのメルボルンの素顔を垣間見た気がしました。コミュニティー・ガーデンはマイノリティーの移民達にとっては祖国の食文化を受け継いで行く場でもあり、また、言葉の通じない移民同士がお互いの種や収穫物を分け合う場、隣人達の文化を学び理解を深めていく場ともなっています。そんな素敵な場所でコーディネータとして働くことはとても有意義でやりがいがあるに違いないと思いました。でも、いさかいの調停などは気弱な私にはとても務まらないかなぁとも思います。こちらのコミュニティー・ガーデンはボランティアを募集しているそうです。メルボルンに在住している方は挑戦してみてはいかがでしょうか?詳細は下記のホームページをご覧下さい。
- Cultivating Community
- Australian Farms & Community Gardens Network

ランチタイム (12:45pm)

ランチはビザ、パイ、サラダ、ファラフェル、マッシュルームボールなど手作りのオーガニック料理のバッフェが並びました。それを各自がプレートに取り分けてバルコニーや外の木陰に陣取ってのんびりといただきました。近所の果樹園から差し入れられた洋梨やりんごもとてもおいしかったです。ぽかぽかと気持ちのよいお天気の日で外の空気に触れながらいただくランチは格別でした。

午後の講演 (1:45pm)

Jude Fanton女史の講演Seed Savers Natworkのディレクターで日本でもおなじみのJude Fanton女史の講演は彼女が関わった学校農園プロジェクトの報告でした。現代のオーストラリアの子供達が直面している食生活もアメリカやイギリスの子供達に負けず劣らずひどいものです。子供達が学校農園への参加を通して、野菜や食べ物についての理解を深めることが出来たり、育てた野菜を学校給食へ取り入れることによる栄養改善を期待出来たりと学校農園活動はとても意義深いもので、これからの更なる普及が期待されます。子供達の食べる物については日本もいろいろ問題がありますが、給食に関する学校や親の取り組みについては日本はまだまだ恵まれているかなぁと思いました。

Biolytix●コスト効率の良いBiolytixという水質浄化システムの開発者であるDean Cameron氏の講演。Biolytixは昨年、オーストラリアのTV番組「Great Invention」で優秀賞を受賞した発明品です。Biolytixは愛知Expoのオーストラリア・パビリオンにも出展されるそうです。

●Dean Cameron氏の講演が早めに終わったので、別の会議室で行われていたPermaculture Research InstituteのGeoff Lawton氏の講演の最後の5分くらい見学することができました。ちょうど日本のNGOであるNICCOとのヨルダンにおけるコラボレーションについての簡単な紹介が行われていました。Geoff Lawton氏はパーマカルチャーを通して世界各国の開発教育に携わっている活動家です。聴講した人によると大変素晴らしいレクチャーだったそうで聞き逃してしまいちょっと残念です。それとちょっとびっくりしたのは今年9月中旬からBill Mollison氏とGeoff Lawton氏が講師となってメルボルン大学でPDCコースを開催する予定があるのだとか。Bill Mollison氏は高齢のため、もう引退したという噂も流れていて2001年のタスマニアでのPDCコースが最後かと思っていたので、ちょっと興味有りますね。おまけに地元開催ですし。ただ、日程的に都合がつきそうもないのが残念です。費用もA$1500ということで一般的なPDCコースより50%ほど高めに設定されています。興味の有る方はPermaculture Research InstitutePermaculture Institute/ Tagari Publishingに詳細が載っていますのでご参照下さい。

Southern Cross Permaculture InstituteのコンサルタントであるRick Coleman氏の講演。南極以外の全ての大陸でパーマカルチャー事業に携わったColeman氏が長年の海外での経験を語ってくれました。「私たちはどの分野においても専門家とはいえない。しかし、予期せぬいろいろな事態に臨機応変に対応しなければいけない開発途上国における援助活動においては、ちょっとずついろんな分野の知識を持っているジェネラリストであることがかえって大きな強みとなる」という言葉が印象に残りました。また、「(戦争や虐殺などにより)人間としての尊厳が失われてしまった社会に持続可能な社会は望めない。まず、尊厳の回復から始めなければならない。」という言葉にも重みがありました。

シンポジウムで買った本

Grown your own Bushfoods, Keith and Irene Smith(著), 2003年 New Holland 出版

オーストラリアの野生の食用植物の紹介とその育て方、調理法をまとめた本です。ブッシュフードは昔はアボリジニや一部の人の間でしか重宝されていませんでしたが、最近はブッシュフードを使ったジャムやスパイス等がグルメフードとして人気が出て来たりして裾野が広がってきています。

Lawns into Lunch - Growing Food in the City, Jill Finnance(著)、 2005年 New Holland 出版

この本は市街地に住みながら家庭菜園を楽しんでいる22人の園芸家の生活を紹介しています。私は郊外に住んで狭い庭で家庭菜園をしているので、この本をぺらぺらとめくってみた時、ヒントに出来そうなアイディアがいろいろありそうと思って購入してみました。閉会の時に座りながらこの本を眺めていると、とても親しげなおばさんが横に座って話しかけてきました。実はこの本の著者であるJillさんでした。記念にさっそく本にサインしていただきました。

個人的感想

シンポジウムを通して感じたことは、パーマカルチャーがこれから進む方向として「個」の文化から脱却して「共同体」を作っていくことを模索しているように感じられました。西洋文化というのは良かれ悪かれ「個」の文化です。対照的に日本の文化は「和」を尊ぶ「集団」の文化です。日本は現代の都市文化においても、コージェネレーション等、エネルギー効率の高い住環境という点では平屋建て一軒家ばかりのオーストラリアよりはるかに優れています。パーマカルチャーがこれから向かおうとしている持続可能なコミュニティーは、例えば、「コンポストトイレの共同処理」ひとつをとっても「村の肥だめ」のように昔の日本にあったものです。日本の里山文化は模索するパーマカルチャーの行く末に様々なモデルを提示することができるのではないかと感じました。

初筆−2005年5月

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